人の幸せにつながる技術蓄たわえた力をみんなのために冷たいものを運ぶ“バン”には熱い職人たちの技が活きています暑い夏の日に食べるアイスやかき氷はみんな大好き。その昔は冬の間に貯蔵した雪を二重の桐きの長なち持(箱)に入れて、昼夜4日間かけて江戸まで運んだといいますから、現代の私たちはとても幸せです。そんな幸せを可能にしているのが、この工場で造っている冷凍バンのトラック。それは、走る巨大な冷凍庫です。長距離を走るトラックの振動にビクともせず、水も漏もらさぬ密閉された空間をつくるには、多くの知恵と技術が要いります。私が担当している床部分は、断熱材のパネルを覆おおうように、アルミの材料を溶*接して組立てますが、針の穴も許さない高い精度と、ビードと呼ばれる溶接跡をどれだけ美しく仕上げるかが腕の見せどころ。仕事柄、街を歩いていても、きれいに溶接されている金属の手すりなどを見かけると、つい立ち止まって、じっと見入ってしまいます(笑)。りく“がもようせつ工業高校で面おもろ白しかったのが溶接の実習。会社に入って先輩の溶接を見た時、その美しさに驚き、「絶対に超えてやる」と日々練習を重ねました。溶接の技術は口で言われてもなかなか身につきません。繰り返しやって、うまくいく感覚を体に覚えこませる以外、上達する方法はないのです。現在の私は、現場の最前線でチームをまとめながら、若手技能者の育成をする役割も担になっています。自分自身、腕に納得しているわけではなく、さらに高めていきたい気持ちが強いのですが、チーム全体の技術力を底上げすることも私の使命。モノに向かうだけがものづくりではないということを肌で感じています。思えば大工の親方として、何から何まで一人で現場を仕切っていた私の父。「多くのことを背負っていたんだな」と思うと、その背中が今、一層大きく感じられます。 心をラクにする言葉の魔法「適当に、常識ある仕事をすればいい」。新入社員の頃、先輩からこの言葉を聞いた時、肩の力が抜けて、楽しくいい仕事ができるようになりました。適当に”というのは、決して「いい加減にやる」ということではなく、「ほど良く」そして「自分で考えて適切に行う」という意味があります。そういう風に仕事をとらえると、気持ちがラクになりますよ。*溶接…金属の部品を熱で溶かし、接合する加工技術。(31歳)出身校:能美市立辰口中学校、石川県立小松工業高等学校各種トラックボデー(車体)の開発・設計・製造・販売を一貫して行い、現代の物流システムをサポートしています。株式会社トランテックス〒924-8580 白山市徳丸町670番地Tel. 076-274-2806 URL http://www.trantechs.co.jp/ ■代 表 者 代表取締役社長 原田 泰彦■設 立 昭和5年 ■従業員数 1,126名トラックボデー製造株式会社トランテックス製造部 バン組立課2係 冷凍組立 指導員U. Wさん
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