石川県版 Vol.33
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基本は失敗して身につく技能で多くの人に役立つ技能習得の苦しみは人を喜ばせる楽しみに変わる荒あらき木 渉わたる入社して間もなく、「これやってみるか?」と上司にすすめられたのが、“MC(マシニングセンタ)”という工作機械。金属材料の面を削り、溝みを掘り、穴をあけ、ねじを切るといった何種類もの加工をコンピュータで制せょ御し、一台でやってしまうスーパーマシンです。工業高校の機械実習で使った機械とは違い、予想以上に巨大なMCを目まの当たりにして、本当にこれを扱えるのか、3年前の自分には不安しかありませんでした。材料は鋼鉄の塊。それをボルトで機械に固定するのですが、外れないよう力に任せて、必要以上に締めたことでボルトをダメにしたり、材料がゆがんで精度が狂ったり、失敗の連続でした。何度も自信を失いそうになりましたが、上うま手くいくと上司がちゃんと評価して言葉をかけてくれ、失敗と成功を繰り返しながら、物造りの基礎を少しずつ体で覚えてきました。いぎあつか小さい頃から、父が楽しそうに車いじりをする様子を見て、機械に興味を持ちました。高校3年の時、技能五輪日本代表選手の旋せんん盤ば作業を見学して、その圧倒的なスピードと技術に目を奪われ、自分も高い技能を身につけたいと思いました。それから3年。現在、自分が操作するMCは2台。1台は昨年納入されたばかりの最新型です。造っている機械部品は、世界中で生産されるあらゆる工業製品の精度を決める基準となるものだけに、100分の1㎜の精度で絶対的な品質を保証しないといけません。そして時々頼まれるのが、自社の工場で使用する“治*じぐ具”の加工。渡された図面を見てプログラミングも自分で考えます。まるで自分の技能をテストされるみたいですが、「バッチリだったよ!」って感謝されると、自分の技能で人の役に立てたことが実感でき、嬉しくなります。やった分だけ自分の身になる高校時代にやっていた弓道には、「射法八節(しゃほうはっせつ)」という基本動作があり、自分はそれに意識を集中することで精神を安定させることができました。常に平常心を保つには、基本を極めるまで繰り返し練習するしかありません。僕はテスト期間中もこっそり自主練をしていました。苦手なことも前向きに取り組んでいけば着実に身につき、やがて自分の強みになります。*治具 …加工する工作物を機械の所定の位置に取りつけるための補助器具建設機械、工作機械、計測機器などの部品ユニット、航空機部品、半導体周辺装置、工作機械周辺装置、ロボット製品など開発・製造。岩本工業株式会社〒924-0014 白山市五歩市町446番地Tel. 076-275-1185URL http://www.iwmt-kg.co.jp ■代 表 者 取締役社長 西村 学■創  業  昭和24年 ■従業員数  85名 (21歳)さん出身校:金沢市立大徳中学校、金沢市立工業高等学校ぞ15工作機械オペレーター岩本工業株式会社製造1課 1係

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