石川県版 Vol.33
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33oV9102ETON.l 5こARUKASかし職人として生きた証あを遺のすくわけにはいかない!」と気持ちを奮い立たせました。「きっと、やり抜いたときに見える景色は、今とは違うはずだ」そう考えると、なぜか現場に行くのが楽しくなりました。それまで出来なかったことや、やったことのないカタチの屋根に挑戦するのが嬉しく思え、新しい技術を覚えることに生きがいを感じ、年々、瓦を葺くのが好きになりました。今思えば、最初の10年間は、“仕事”だと思って屋根に上がっていたんだと思います。それからさらに10年近く月日が流れ、今では職人の中で古株になってしまいました。ロマンを感じる生き様かつて日本の戦国時代にはいろんな武将がいました。その中で一番好きなのがうたれましたが、徳田幸村。大坂夏の陣川家康を震え上がらせたこの武将の「戦国時代に自分が生きた証をのこしたい」という生き様に憧一つの仕事を長く続けていると、時々自分の能力の壁にぶつかる時があります。でもそれは、目をつむって階段を上るのと同じで、伝いに進んで向踊り場に出ただけのこと。壁って行けるのです。きを変えれば、さらに上仕事で自分が生きた証をのこしたいと思ったら、何度もその壁を乗り越えて、上へ上へと上って行かなければなりません。そうやって上り切った時に初めて、見たことのない天下じんさなだ ゆきむら真で討れます。修しゅう繕ぜんも含めると軽く百軒を超えまのぼ1年間に瓦を葺く屋根の数は、すから、県内を移動する途中、いたる所で自分が葺いた屋根と出会います。そして施せこう工時のことを思い出しては、仲間と話をします。そんな記憶の一つ一つが瓦葺き職人として生きてきた自分の証。一〇〇%満足のいく仕事というのはありませんが、それがまた次の仕事に向かうモチベーションとなるのです。瓦葺きは誰でもすぐに出来る仕事ではなく、決してラクな仕事でもあみおろ下すことができるのだと思います。りません。屋根の形や大きさ、使う瓦の種類も一軒一軒異なるので、マニュアルなどはなく、瓦の割りつけ、重なり方など職人の考え方や個性(センス)、そして技量がすべて仕事に表れます。それを楽しいと思えるかどうかが、職人を続けるための条件。だから、若い職人のいいところを引き出してやり、それを生かしながら、仕事を楽しめるようになってほしいと思います。古い屋根を葺き替えていると、「ひょっとして、これは親父が葺いたのかな…」と思うことがあります。親父が職人をしていた年数に追いつくのはまだ先の話ですが、その時が到来してこれまでの仕事を振り返ったとき、「これで良かったんだ」と自分自身で満足できたら、「最高の職人人生だったよ」と親父に言えると信じています。瓦の製造工場から始まった、瓦のことを知り尽くしている屋根工事専門の技能集団。若い社員が多く、厚生労働大臣認定のかわらぶき1級技能士は25名います。杉本瓦工業株式会社〒925-0004 羽咋市一ノ宮町レ100番地Tel. 0767-22-0625 URL https://www.sugimotokawarakougyou.jp ■代 表 者 代表取締役社長 杉本 孝司 ■創  業 昭和8年  ■従業員数 57名  技術の習得には時間がかかる。簡単にできる仕事ではないから、常に自分の腕を磨き、若い職人と共に楽しんで成長していきたい。瓦葺き職人として人生を全うした父と、父が使っていた手作りの銅線巻きを見あこがかべづた

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