富山県版 Vol.16
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背中を押され世界が広がるラーから外され、甲子園に行ったのに、ベンチに入ることができませんでした。しかし、それは自分に何かが欠けていたから招いてしまった結果。同じ思いは二度としたくないと、気持ちを奮ふるい立たせてきました。これまで10年以上、私は印刷機のオペレーターとして経験を重ね、不良を出さずに印刷を行うための機械の調整方法や段取りを身からだ体で覚えました。現在は係長というポジションで、9台の印刷機を操作するオペレーターたちが、完璧な印刷を安全に、そして楽に速くできるよう改善できることを日々考え、結果を出すための戦せんり略ゃくを練ねっています。私は小学校2年生の時からバレーボールをやっていて大好きだったんですが、中学から高校に上がった時に知っている友達がいなくて、部活に入る勇気がありませんでした。それほど人見知りの激しい性格でしたから、工場長から事務職に変わることについて意いこう向をたずねられた時は、正直、気が進みませんでした。それまで工場の中で、刷すり上がった添付文書を紙折機で折る工こうい程てにいましたから、デスクに向かいパソコンを使って仕事をするというのは想像もつきませんでした。しばらく産さんき休ゅうをとられる先輩に代わって、事務の仕事を引き継ぐことになったのですが、最初は電話もしどろもどろ。お客様にお出しするお茶も、濃すぎたり薄かったり。毎日が緊張と失敗の連続でした。それでも、社員の皆さんの出しゅっ退たい勤きんや作業日報など、人に関するデータをまとめる仕事を重ねていくうち、100人近い南工場の社員さんの名前も全部覚え、美おい味しいお茶の淹いれ方も完璧にマスターしました。事務所にいると、各部署のいろんな人から声をかけてもらえ、他の工場の人たちとも連絡をとります。言葉を交わすことで気持ちも通じ、「みんないい人たちだな」って、この職場で働いていることを幸せに感じます。もう一つ、私にとって未知なる経験が、外国人技能実習生との出会い。ベトナムから来ている彼女たちと交わす交換ノートには、困り事や悩み事、お互いの家族のことや、季節ごとの日本の慣かんし習ゅうなどを書いています。日本語をよく勉強していることに感心し、家族に仕しおく送りをしたり、小さなお子さんを残して日本に来ていることなどを知り、頭が下がる思いです。手作りのベトナム料理をごちそうになったこともあり、春巻きはすごく美味しかったです(笑)。そんな彼女たちは、3年間の実習を終え、この前帰っていったのですが、富山空港で最後に抱き合った瞬間、私は涙があふれ出して止まりませんでした。最近、「笑顔が増えて、明るくなったね!」って言われました。初めて経験した仕事の一つひとつが、きっと知らないうちに、自分に自信をつけさせてくれたのかもしれません。上司に背中を押してもらって良かったと感謝しています。61oV9102.l 9 ETONARUKAS■永野 睦実さん【事務】 印刷・包装資材の製造、販売朝日印刷株式会社〒930-0061 富山市一番町1番1号 一番町スクエアビルTel. 076-421-1177 URL http://www.asahi-pp.co.jp/■代 表 者 代表取締役社長 濱 尚 ■創  業 明治5年(1872年)  ■従業員数 1,284名  印刷機以外に、紙を裁断する機械、添付文書を小さく折りたたむ紙折機、枚数を数える計数機など、工程ごとに様々な機械や検査機を使います。最近、現場の人から掲示物や資料作りを頼まれることも多くなりました。自分のできることを増やしてもっと役に立ちたいです。

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