パワーエレクトロニクスで世界最小に挑戦したエンジニア上で課題がたくさんありました。それでも私たち開発二課のメンバー12人は、〝世界最小の電源をつくる〟というゴールに向かい、立ちはだかる難題に挑戦することを決めました。人は運動量が増えると脈拍数が上がって体温が上昇するように、「スイッチング電源」は、周波数を上げることで多くの部品を小型化できる一方、損失する電力も増え、半導体がかなり熱を持ってしまいます。それも大きな課題の一つでした。ヒートシンク(放熱板)の効果が最大となる形状を見つけるため、「有限要素法」という解析手法を使ってシミュレーションを何度も行ないました。これは私が大学時代に研究した物理の法則に基づく解析だったので、大いに役立ちました。さらに実装する電子部品の改良や配置、基板の回路についても、条件をいろいろ変えながらトライアンドエラーを繰り返す日々。失敗するケースが圧倒的に多かったですが、小さな成功がつながって性能が少しずつレベルアップしていき、製品化への道がはっきりと見えてきました。人が健康に生きられるのは、体が必要とする清らかな水や酸素があるからですが、電気器具や電子機器が正常に動作するのも、規格に合った電気エネルギーが効率よく供給されているからです。私が携わっている〝パワーエレクトロニクス〟は、電力を最適な状態に変換する技術。「電源」という言葉には広い意味がありますが、私たちがつくる「電源」は、電気を動力とするほとんどの製品に組み込まれる重要な装置なのです。ネットショップには、最新の電子機器が次々とアップされていて、スマホの充電器は驚くほど小さく軽くなり、性能も大幅に向上しています。それはきっと、中に組み込まれている半導体に秘密があるはずだと推測し調べてみると、窒化ガリウム (GaN)という新しい素材の半導体が使われていることがわかりました。確かにこの半導体を使えば、多くの部品をより小さくすることが可能です。しかし、スマホよりもかなり厳しい環境で使用される産業機器の場合、電源として実用化するには、品質を保証する富 山 大 学工学部 知能情報工学科 卒業出身校:上市町立上市中学校、富山第一高等学校 スイッチング電源の開発製品開発
元のページ ../index.html#16