屋根の上のヒーロー職人には覚悟が要いる職人は仕事に満足したらおしまい最期に満足できればそれでいいやりたい」って親おやじ父に言ったら、「ふざけんな。そんな甘い仕事じゃない!」って怒おこられたのを覚えています。3人兄弟の末っ子だった自分は、小さい時、親父が仕事に出かけようとすると、いつも「連れてって!」と駄だだ々をこねました。青空の下、高い屋根の上に立つ颯さっう爽そとした親父の姿がかっこよくて、それが見たかったんです。自分が同じ仕事に就ついてからも、あれこれ口を出すことはなく、いつも「気ぃつけてやれや!」と言うだけでした。そんな親父も自分が一人前になった姿を見せる前に急きゅう逝せいしてしまい、特別何か教わったというものはありませんでしたが、32年間、瓦葺き職人として人生を全うした親父高校を卒業して、「俺も瓦かわぶ葺らきを職人気かたぎ質で寡かもく黙な人でしたから、の後ろ姿は、今でもまぶたの奥に焼きついています。自ら選んだ道でしたが、10年くらい経った時に、このまま職人として仕事を続けるのか、悩んだことがあります。「かわらぶき1級」の技能検定にも合格していたのですが、自分の技量に納得できず、それを極めるには、この先まだまだ修行を続けていかなければならない職人の世界の厳しさを知り、気力を失いかけました。そんな時に聞こえてきたのが、「甘い仕事じゃないだろ!」という親父の言葉。「32年間続けてこそ、親父に認めてもらえる。ここで弱音を吐(38歳)出身校:志賀町立志賀中学校石川県立羽松高等学校瓦葺き職人杉本瓦工業株式会社工事部 職長 かわらぶき1級技能士.KU
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