横浜事務所で原稿を書いていた時、ドアをノックして若いお兄ちゃんが
入ってきた。
時々、いろんなセールスがやってくるが、大きな発泡スチロールの箱を
抱えてきたのは初めてだ。
日焼けした、さわやかな学生アルバイトだった。
飛び込みセールスが来ると、よほど忙しい時じゃない限り、すぐに追い返す
ようなことはしない。
飛び込みセールスしている人からは学べることが多いからだ。
特に、どんな切り口のトークをしてくるか、とても興味がある。
「おやつ好きですか？」
（こういう、相手が断りにくい質問はいいね）
「好きだけど、何か？」
「全国のおいしいスイーツを通信販売で売っている会社なんですが、
今日は特別に訪問販売にきました。なかなか買えない、有名な特大ワッフルが
お試し価格でなんと３６０円。３種類ありますが、おひとついかがですか？」
　ちょっと高い気もしたが、炎天下、お盆だというのに頑張っている若者の
姿に胸を打ち、キャラメルクリームのワッフルを一つ買った。
「今日はキャンペーンにつき、３個で１０５０円で買っていただけます。
通常は、通販だけなので送料もかかるんですが、それも無料！どうですか？」
（直接販売だから、送料は無料って当たり前じゃないか。このトークは
ちょっと無理があるね。）
まったくお得に感じなかったので、１個だけにしといた。
訪販なので、クーリングオフの説明がちゃんと書かれた領収証をくれた
ところはまともな業者に思えた。
「ありがとうございましたぁ～」
お兄ちゃんが出て行った後、いったいどこの有名なワッフルなんだろうと
思い、袋のウラにあった製造ラベルを見た。
〔製造元　○○○フード　住所　石川県金沢市・・・・〕
地元金沢でつくっているワッフルを出張先の横浜で買うとは・・・。
特大ワッフルの味はともかく、おなか一杯になりやした。