「鳥のヒナは、生まれて最初に見たものを親と思い、ついて回って、
やることをまねる」という話があります。
経営者の方々と話していて、共感するのが「最初に勤める会社が
一番大事」だということ。
中小企業の場合、新卒はなかなか採用しにくい。
だから、中途入社の人で補う会社が多い。
初めて仕事を変わる人から、複数回転職している人など、それぞれ
ですが、
肝心なのは、仕事のスキルよりも“しつけ”。仕事に対する態度です。
学校というところは、基本的に勉強を教わるところですから、大学を
出たからと言って、職業人になるための教育は受けていません。
アルバイトをしたことのある学生は、「仕事をするって、どういう
ことか」少しは理解すると思いますが、普通、アルバイトには、重要
な仕事はさせません。
若い人にとっては、最初に就職する会社が、“社会を知るための学校”
になるのです。
ちなみに、私が初めて経験したアルバイトは、高校3年生の冬休み。
お餅やさんで、確か一週間ほど働きました。大量のもち米を手で研ぐ作業
でしたが、手は真っ赤にかじかみ、腰はかがみっぱなしで相当キツかった
のを覚えています。
「お金をもらうことって大変なんだな」ということを知りました。
大学に入学して、初めて東京に出てきた時は、新聞販売店に住み込み
で、新聞配達をしました。いわゆる「新聞奨学生」でしたが、これは
精神的にも肉体的にも正直、キツかった!当時、心配して電話してくる親
に愚痴(暴言)ばっかり吐いていました。(ゴメンなさい)
結局、親が突然上京し、半年も続かずにやめさせられました。すごく
情けなかったですね。
大学を出て、初めて就職した会社がまたスゴかった!ある機械関係の
メーカーだったのですが、毎日7時半の出社で、帰宅するのが午前1時2時。
当時はプラザ合意から始まった急激な円高に対応するため、日本の製造業
は安く造って、量をさばくという体制をとっていた最中だったんですね。
衝撃だったのは、この会社の給料日。その日は夕方になると、仕事の途中
でも作業服からスーツに着替えなければならず、役員室の前の廊下に
ズラッと並び、一人づつ役員室に入って給与明細の入った封筒を受け取る。
それを、一旦頭上に掲げ、うやうやしく受け取るのが作法だと先輩から
教わった。
何せ、それが自分にとって最初の会社だったので、「そんなもんなのか」
と思っていました。いろいろ他の会社の話を聞いて初めて、かなり異質な
会社だってことを後で知りましたが・・・。
その会社の慣習で、先輩に右にならえでやっていたことですが、「給料を
いただくという心持ち」を教えていただいたと思っています。一番重要な
ことかもしれません。
最初に新卒で入った会社は、「新卒で何も知らない」という前提で接して
くれますから、怒られることも正直多いですが、基本的なことから教えて
くれます。失敗しても、大目にみてくれます。
だけど、2回目、3回目の会社となるとそうはいきません!年齢も高く
なれば、「そのくらい、わかっているだろう」「知っていてあたりまえ」
「経験者に教えるなんて失礼だ」と思われ、自分から教えを乞わない限り、
教えてもらえません。
転職の場合、面接時は自分を高く売り込みたいという意識が働くので、
自信がなくても「出来ます!」と勢いで言ってしまいがち。そうなると、
今さら恥ずかしくて、なかなか聞けないものです。
だから、最初に働き始める会社がいかに大切か。そこでどれだけ学ぶ
ことができるかが重要だと思います。
会社の大小、お給料の高い安い、休みの多い少ない、仕事のラク、キツイ
で判断してはいけない。
理由は様々だと思いますが、1年2年で辞めてしまっては得るものがない。
「キツイな~」と思う会社に入ったら「ラッキー」と考えるべきです。
でも、これって、学校や予備校、塾も同じじゃありませんか?
給料は奨学金、残業は補習授業だと思ったらいいですね。
最初の就職先は自分の土台づくり。よく、退職することを「卒業」
と言い換えることがありますが、それは、ちゃんと得るものを得た人に
当てはまる言葉です。
就職先を選択するとき、「安定」ということををまことしやかに唱える人が
多い気がしますが、本来、「安定」というものは自分が努力して手に入れる
もので、入れ物で保証されるものではないと思います。
まずは、最初の職場で自分自身が安定した就業能力を身につけること。
これが大切なんじゃないでしょうか。
最初の会社は学校と思え
2012/10/27 09:10