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選択肢は広いほうがいいのか?
2019/12/08 08:12

Beggars can’t be choosers.(乞食は選り好みできない)
という英語のことわざがある。
日本語のことわざにも「背に腹はかえられない」という言葉があるが、
他に選択できないのであれば、甘んじて受け入れるしかないという状況で
使われる。

たくさんの中から好きなものを選べるほうが、一見幸せだと思えるが、
果たして本当にそうだろうか?
選択できるとなると迷いも生じ、後になって「やっぱり、あっちの方が
良かったかもしれない」と後悔することもある。

一方で、“それしか選べない” という状況であれば諦めもつくし、それでも
自分に道が残されていたということは慰めにもなる。
私は大学時代の就職活動で内定を取り消された経験がある。プラザ合意後の
急激な円高によって、企業の採用計画が急遽、変更になったことが理由で
あったが、あの時の悔しさは忘れない。その後、地元の中小企業を受け、
自分を採用していただいた時、感謝の気持ちがどれほど大きかったことか。
あまりに嬉しくて、ドイツにあるその会社の海外拠点を訪ねたくらいである。

いわゆる“就職氷河期”に就職活動を余儀なくされ、何十社受けて落とされた
という方々にもこれまでインタビューしてきた。中には国立大学の理工系
学部を卒業された方もいて信じ難かったが、それほど日本経済は厳しい状況
にあったのだ。その彼らの口からよく聞いたのは、「自分を拾ってくれた
この会社に恩返しがしたい」という言葉だった。時代は変わり、売り手市場
になった今、その気になれば転職も可能なはずなのに、感謝の気持ちを心に
持ち続け、そして会社から仕事ぶりを評価されて、立派に自分の居場所を
確立した人たち。「彼らは運が悪かった」なんていう言葉は決して当てはま
らないと思った。

最近、「内定辞退率予測」なるものが高値で売り買いされている問題は、
まさに売り手市場の現代社会を反映しているといえる。そして、その様子は、
まるで金魚すくいをしているかのようで滑稽でもある。泳ぐ方向もわからず
右往左往する金魚(就活生)たちをポイ🔍を何度も破られながら、必死に
すくおうとする企業の人事担当者たち。人材の確保は死活問題。今の採用
システムの中で効率よく結果を求めようとしたら、これは必要悪なのかも
しれない。

売り手市場で、選択肢に恵まれている現代の学生たち。しかし、俯瞰して
みると彼らも「大学を出て会社に入る」という一つの選択肢しか与えられて
いないのだ。

先日、愛知県で開催された「技能五輪、アビリンピック全国大会」を取材
してきた。大工、左官、配管、旋盤、機械組立、料理、和裁、フラワー装飾
など42職種にわたって“職人技”を競い、優勝すれば日本を代表して世界大会に
出場できる。参加選手の年齢は23歳以下。就職活動をしている大学生たちと
同じ世代だ。まだ高校生の選手もいれば、高卒で働き、現場で技能を磨いて
きた若手技能者もいる。そして“大学生が入りたい大手企業”からも、選手が
たくさん出場している。

大学卒の割合が6割。その一方で、職人の割合は恐らく1割もないだろう。
何に価値を見出すかは人それぞれだが、“AI”にとって代わられる仕事が増え
ていくと言われるこれからの時代。固定概念を破れば、他にも選択肢が見えて
くる。実はそっちのほうが近道なのかもしれないのだ。

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