ごまかしのきかない加工技術
高級金属部材であるステンレスは、素材がそのまま表面に出る。塗装もできないから、そのまま人目にも触れる。
このステンレスを、まるで精巧な折り紙をつくるように曲げ、‘チグ溶接’という難易度の高い溶接技術でくっつける。この溶接方法は、素材の切り口を溶かしてくっつける技法のため、溶接跡が目立ちにくい。しかし、端と端が100分の数ミリ空いても、溶接できない。
例えば、サイコロのような箱を作るとき、それを6面に切り開いた状態の「展開図」というものを最初に設計する。それをステンレスの板からくりぬき、曲げ加工を施すのであるが、紙と違い、金属は曲げると伸び、熱を加えると変形する性質を持っている。そういった歪みも計算した緻密な設計が求められるのだ。
金型を造れば、同じものを正確に大量生産できるのだが、小ロットや一品ものになると、金型をつくるだけで相当な金額となるため、コストを考えると、金型に依らない「手加工」の技術が必要となるのである。
しかし、それを可能にするには設計者から、加工する職人まで、全ての技とチームワークを結集しなければならない。
「正直、外注先は嫌がりますね。口を揃えて同じ仕事はできないって言いますよ。」
大手も参入できない、町工場の技術力。知られざる中小企業の中にこそロマンがあるのだ。
ものづくりのチカラ
2008/07/01 10:07