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【リア(ル)充】
2011/02/20 06:02

「中山さん、“リアジュー”って知ってますか?」
卒論制作の取材に来た地元国立大学の女子大生は僕に訊ねた。
(リア王の家来?それとも、最近流行りのジュース?)
「リアル(現実の生活)が充実していることを言うんですよ。
今、就活している大学生の間でよく交わされる言葉なんです。」
「おまえ、“リア充”いくつある? オレ、サークルとバイトしかないよ。
やっぱ、1ヵ月くらい留学でもしときゃよかったかな?」
というような会話をよく聞くそうです。
 就活学生は、就職サイトから志望する企業にエントリーする際、
「エントリーシート」というものを記入して応募しなければいけない。
その中で特に重要視されるのが、「学生時代に何をやってきたか」。
 
 少子化の影響で、今や大学進学率は50%を超え、短大、専門学校など
を含めると、約8割が“いわゆる大学生”になってしまった現在、就活学生が
頭を悩ますのが「自己PR」だ。 
 本屋に並んでいる、“就活マニュアル”本には「エントリーシートの書き方」
として、
 「人事担当者から一目置かれるには、いかに自分は充実した大学生活を
送ってきたか。そして学生時代の経験を通して、自分はリーダーシップがあり、
積極的な人間であるということをアピールすることがポイント」
ということが同様に書かれている。
 
 そもそも将来を見通した学部選択や職業観もなく、ただ大学に進学してしまった
フツーの大学生にとって、これは答えのない、大学受験よりも難しい問題かもしれ
ない。
 人事担当者いわく、
「なぜか、エントリーしてくる学生のほとんどが、“サークルリーダー”や
“アルバイトのチーフ”」 なのだそうだ(笑)。
 “リアル”とは一体、何なのか?
 「リア充」の対義語として、インターネットの仮想世界に浸かっている人を
「ネト充」というらしい。
 僕から見ると、「リア充」も「ネト充」もそんなに変わらないような気がする。
そもそも大学進学の理由自体、「リアル」ではなく、学歴のための進学になって
いるからだ。大学生を十把一絡にしてしまって、大変失礼だと思うけど、特に文系
の学生はそんな気がする。
 高校3年生の時、経済学部や法学部を選んだ同級生に、
「なぜ、そんな(高校生があまり興味を持ちそうに思えない)学部を選んだのか
聞いたことがある。
 みんなの答えは一律「就職の時、ツブシがきくから・・・」
わかったようなわからないような理由に、違和感を感じたものだ。外国語学部を
志望した自分は、彼らより少しはマシだったと思うけど、今ふり返ってみると、
明確な職業に対するイメージまでは持っていなかった。
 僕が考える“リアル”はちょっと違う。サークル活動やアルバイト、留学経験
なども大切な要素ではあるけど、そもそも大学というところは、最高学府と言われ
るだけあって、高い授業料を払って専門的な知識を高める場所。そして、知的労働者
としての能力を身につけるための教育機関だ。ようするに、それを全うすることが
大学生としての本分。本来あるべき“リアル”な姿ではないか。
 しかし実際のところ、司法試験を受ける学生でもない限り、「サークルにも所属
せず、授業が終わった後も、遅くまで図書館で勉強し、土日のアルバイト以外は
すべて、○○学の研究に費やしました」という、昔の“書生さん”みたいな学生が
いたら、「ウソつき」か「おかしなヤツ」と思われて敬遠されてしまうかもしれない。
 「さくらノート」を創刊して4年。
高校生の時に「さくらノート」を読んだ「さくらノート世代」の大学生が、
いよいよ就職活動を開始する。
 「さくらノート」に登場した会社に面接に行くときは、是非、バックナンバーを
持参していって欲しい。
 
 「当社の志望動機は?」と訊かれたら、
サッと「さくらノート」をカバンから取り出し、
「私は高校生の時、御社のこの方の話を読み、とても感動しました。
以来、ずっとこの会社で働きたいと思い続けていました!」
と言う。
 一発で“採用決定!”になるのは間違いないと思うのだが(笑)。