石工 明地様御兄弟
この仕事始めたんは、15の時や。
わしが20歳の時に先代が亡くなってしもたから、
仕事習うたのは4~5年くらいやな。
父親は、自分には言わなんだけど、
「わしが亡くなっても、(息子は)仕事継げる。
心配するな!」。
そう言うとったって、後でおふくろから聞いた。
昔は、仕事も山にたんとあった。河川の護岸や
のり面の防護は、今でこそコンクリで固めてしもけど、
昔は川で石を割って、運んでは積んだもんや。
毎朝、仕事行く前に道具を直しとかんといかんから、
見習いの時は朝3時に起きて、フイゴで焼き入れして、
道具を叩いとった。
今みたいにダイヤモンドの道具なんかない時代やった
からな。
10年やっても半人前や。覚えんなんこたぁ、ようけある
さかいなぁ。
同じ戸室石でも、顔はみんな違うさけな。強さも重心も
違うから、それを見て積み方も順番も変えんならん。
石が、「ここに置いてくれ」
ちゅうとる声が聞こえなあかん。無理に合わん石を入れ
たら後から大変や。時間も何倍もかかってしまう。
一つの石を、先のことまで考えてアテんかったらだめや。
割るときゃ、石の目を見て方向を決める。
パーンと一発で割った瞬間に表と裏が決まる。
石っちゅうのは、いらえばいらうほど死んでいく。
だからそのままの状態で使うのが一番ええ。
川の中におる原石のあるがままの状態を活かせん
かったら、石垣は迫力出んわな。
一つ仕事すれば、一つ勉強していく。この歳なっても、
まだまだ習わんなんことばかりや。
職人で一人前やいうもんおらん。死ぬまで修行や。
現場を渡り歩いて、悪いとこは捨てて、いいところを
盗んでいく。それしか方法はないな。
そうやって、わしゃ、誰にも負けん仕事ができるように
なった。
「人は石垣、人は城」という有名な言葉がある。
その意味の深さを思い知らされた取材であった。
「人は石垣、人は城」
2015/06/29 10:06