たしか小学校の時に、先生から聞いた話です。
「ホームラン王、王貞治選手のお母さんは富山県、氷見市
の出身。王選手は子供の頃、酢の物が大キライでした。
お母さんは好き嫌いをなくそうと、酢の物を毎日食卓にのせ、
食べなければお肉など、ほかの料理を食べさせなかったそう
です。そして、いつしか王選手は酢の物が大好きになりました。
好き嫌いせず、何でも食べると王選手みたいになれます。」
本当の話なのかはわかりませんが、私もスッパイ酢の物が
苦手だったのですが、その話を聞いて食べるようになり、好き
になりました。
話は変わりますが、「なぜ、大学に行くのか?」というアンケート
に、多くの学生が「やりたいことを探すため」と回答します。
今まで、たくさんの人々にインタビューしてきて思うのは、本当に
やりたいことというのは、「時間をかけてそれに取り組まないと
決してわからない」ということ。
「大学に行ったら、やりたいことが見つかる」というのは大間違い
なんですが、回答としたら、もっともな理由に聞こえるんですね。
最近、大学生が就職活動前に、いわゆる「インターンシップ」を
するのが流行っていますが、そのほとんどが、たった1日かそこら
の職場体験です。本来、アメリカなどで行なわれているインターン
シップは、長期間にわたって社員と同等に仕事を行ない、自己の
スキルアップを図るのが目的。日本のそれは、学生に早期接触を
はかるための大義名分に利用されている似ても似つかぬもの
なのです。
学校側も早期離職を防止するという理由から推進していますが、
日本の大学生が、長期間にわたってインターンシップをするという
ことは現実的に無理です。
他にも中高生が半日ほど仕事を体験してみる「ジョブシャドウ
イング」という、アメリカなどで行なわれているものを真似た取り組み
が行なわれていますが、いつの時代も日本人は横文字に弱い、
マネしんぼだなって感じます。
仕事には辛くて憂鬱な部分がたくさんあります。半日そこら見学
にやって来る“お客様”に対し、そんな所は見せませんし、見ても
わかりません。
新しくてデザイン性あふれるステキなオフィスもあれば、油くさくて
陽の当らない、騒音だらけの町工場もあります。コーヒーカップを
片手にマイペースで働いているように見える職場もあれば、作業服を
真っ黒にし、みけんにシワを寄せ、ピリピリした雰囲気の製造現場も
あります。
五感で感じる職場の雰囲気は重要ですが、それをたよりに判断
してしまうから、「ミスマッチ」になるわけです。
現在、中学・高校で行なわれている職場体験学習も、事前に生徒の
リクエストをとり、行き先を振り分けています。ですから不人気な業種
の会社が受入れに協力しても、結局、希望者がゼロといった現象も
珍しくありません。
大嫌いだった「酢の物」も、食べ続けると好きになる。大切なことは、
「好きなこと」「やりたいこと」を探すのではなく、「嫌いなこと」「やり
たくないこと」に挑戦する覚悟と、好きに変わるまでやり続けるチカラを
養うことだと思います。
王貞治選手の「酢の物」の話
2015/10/25 12:10