工業高校の生徒に‘モノづくりの技術’を教える、国から認定された
高度熟練技能士の方の取材に、県内2つの工業高校を訪ねた
文系を歩んできた僕にとって、
工業高校の実習風景はとても新鮮な驚きだった
放課後といっても、窓の外は真っ暗、18時をすでにまわっている
機械油のにおいと、金属を削るフライス盤のヤけるにおいが入り混じる
足元には、大量のキリコ(金属の削りくず)が散らばる
作業服に作業帽姿の10代の高校生たち
ここではさすがにズボンをさげているようなヤツは一人もいない
中には野球部の部員もいるというが、
実習の時だけ、野球の練習を休ませてもらうのだそうだ
鉄の塊を図面の寸法どおり、6面体に削りあげる
指示されたとおりに寸法を出せたか、ノギスでコンマ何ミリの精度を測る
仲間の作品と見比べて、お互いの問題点をみつける
工具の取り付けはどうか、フライスの回転数はどうだったか、送りのスピードはあっていたか、
機械の音、ハンドルから伝わる振動、熱、削りくずの出方、etc・・・
技能者は、感応力がすべて
五感のすべてを使い、それを身体に叩き込むのだ
単刀直入にたずねてみた
「おもしろいか?」
「おもしろいです!」 ためらいもなく返事がかえってきた
理由をたずねるまでもなく、生徒たちのイキイキとした眼がその答えだった
この子らは、心から教えを請いに来ている・・・そう感じた
本来、学校はそんな場所であらねばならないのだ
今の学校ではほとんどみられない、“師弟関係”がここにはある
「最初は、こんなんじゃなかったんですよ。意欲のある生徒なんてほとんどいない。“半泣き”状態でしたね」
と担当の先生は話してくれた
それが今では、「イヤなら出てこなくていいぞ」と言っても、毎日出てくる。
学校が休みでも、練習しに来るのだそうだ
「彼らは、うまくなりたいんです。早く資格を取りたいんですよ」
長年にわたり、ものづくりの道を歩んでこられた高度熟練技能士の阪本さんと細川さん
その経験と技は本物
”本物”と出会えば、やる気のない生徒の心にもスイッチが入るのだ
蛍光灯の光が工作物の表面に反射し、メタルカラーの輝きを放つ
未来の日本のマイスターたちの顔は、それにも増して輝いていた
This is インダストリアル・ハイスクール
2009/03/10 07:03